1月29日のレジデイの様子をお伝えします。
今回のレジデイでは同善病院の梅沢先生より「ヘルスメンテナンス」についてレクチャーしていただきました。
我々が働いている豊田地域医療センターをはじめとするコミュニティホスピタルでは、入院やリハビリだけでなく、病気に罹患していない健康な人々の発症を予防する予防医療も含めた役割が求められます。他の医療分野と比べるとあまり学習する機会の多くない予防について具体的な症例をベースに、梅沢先生に紹介していただいたUSPSTFという米国の予防医療に関する推奨をまとめたホームページを参考にしつつ各患者に最適なスクリーニング検査内容のプランを考えました。
梅沢先生から提示していただいたものの中に、健康で若く、間近に結婚を控えており、妊娠の希望がある女性についての症例が含まれていました。若年女性で妊娠希望もあるという背景があるので子宮頸癌や性感染症のスクリーニングなどの若年世代特有の項目が議論の中心となりました。予防投薬で唯一エビデンスのある葉酸の内服もUSPSTFで推奨されていました。また、多くのグループで風疹の抗体検査が話題になっていましたが、USPSTFの推奨項目の中には含まれていませんでした。
日本では年代によっては風疹ワクチンが女性のみに接種されていた時代があり、風疹ワクチンを接種して来なかった世代の男性が一定数いることで、風疹の患者数が米国に比べて多いため妊娠希望女性の風疹感染予防をより重要視されているのかもしれません。
このように、国によって疫学や社会情勢が異なることで、他国で推奨されている検査項目がそのまま日本人の患者に適応できないことも少なからず存在します。風疹以外にも、胃癌の患者数は米国と日本では大きく異なるため、胃癌のスクリーニングはUSPSTFの高齢者の推奨に含まれていませんが、日本では推奨されている5種のがん検診に含まれるほど重視されています。
USPSTFは、推奨されるスクリーニング検査を容易に提示してくれる素晴らしいツールですが、臨床現場で活用するには、その情報をそのまま当てはめると現場のニーズと乖離してしまう場合もあるようです。素晴らしいツールを利用することも大事なことですが、目の前の患者さんにこの情報は本当に有益なのかを一度立ち止まって考えていきたいと思いました。
文責 S0 若林