1月15日のレジデイの様子をお伝えします。
今回のレジデイでは久留米大学医学部内科学講座の柴田龍宏先生より「プライマリ・ケア医と語りたい心不全診療のTips」を表題に、心不全の基礎から最新治療、緩和ケアの重要性に至るまでレクチャーしていただきました。
心不全は高齢化に伴い患者数が増加し、再入院率や死亡率が高い厳しい疾患です。柴田先生は心不全を「壊れた車の病態」に例え、心不全治療を「人生というレースを完走させるためのメンテナンス」に例えられました。プライマリケア医として、非医療者に伝わりやすい例えを使って重要性を共有する必要があると身に沁みました。
HFrEFの治療では新規治療薬の迅速な導入がtopicsです。お話の中で非専門医である我々が日常診療で直面する細々した問題に対するtipsが散りばめられており、前向きに診療にあたっていくきっかけになりました。
特に新しい知見であったのは心不全の緩和ケアについてです。近年医療者の間ではその重要性が認識されつつある一方で、実際には需要が供給に追いついていない現状があります。心不全は予後予測が難しいため、緩和ケアの導入のタイミングが課題となりますが、緩和ケアは「病状の進行」ではなく「患者のニーズ」に応じて柔軟に提供されるべきだと強調されました。心不全の病状変化や患者・家族の状況に応じて定期的に評価することが重要であり、プライマリケア医である我々が寄り添っていくべき分野であることを再認識しました。柴田先生が立ち上げに携わった心不全緩和ケアのトレーニングコースであるHEPTが社会のニーズにマッチしてオフィシャルに用いられるようになった経緯についても伺い、generalistとして社会の満たされないニーズを埋めていく役目を担っていきたいと感じました。
心不全診療は、適切な治療と緩和ケアの両輪が求められる複雑な領域です。今回のレジデイを経て、プライマリケア医としての実践的な役割がより明確になりました。柴田先生の言葉通り、「心不全を良く、善く診る」姿勢を改めて学ぶ貴重な機会となりました。
文責 S1 柴田